成長を魅せる入れ子構造 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン#10 シナリオ分析してみた!!

 #10「愛する人はずっと見守っている」

シリーズ構成・脚本:吉田玲子

今回のポイントは「入れ子構造」です。

入れ子とはマトショーリカや重箱のように中にどんどん小さなものを順に入れていくことです。

この入れ子を物語に使うことによって物語に問いと答えや成長などの要素を味わい深く見せることができます。

この#10では入れ子的伏線が多く使われています。

そこに注目してシナリオ分析していきます。ネタバレ注意!

起承転結

  • 起:嫌な人形
  • 承:いつまでいるの?
  • 転:私よりも大事な手紙?
  • 結:50年分の手紙
簡単なあらすじ
母と娘の二人の家にヴァイオレットが訪れる。娘のアンはヴァイオレットのことをお人形だと思い込み、良くないものだと感じた。

そんなヴァイオレットが母が手紙の代筆し、その様子を近くで見られないアン。

代筆中に発作を起こす母を心配そうに見つめるアン。

アンは母に「自分より大事な手紙?」と怒って、母を困らせてしまう。

自分が悪い子だから母の病気が治らないと泣くアンにヴァイオレットが言葉をかける。

ヴァイオレットが去った後、アンは毎年、母からの手紙を受け取る。

今回のポイントでも触れますが、様々なところに伏線がちりばめられ綺麗に回収されています。

時折、落ち葉が映りますが、時間経過の意味以外に母の命が削れていくという意味合いもあるのでしょう。

起:嫌な人形

  • 起:ヴァイオレット登場
  • 承:お客さん帰る
  • 転:書くのお手伝い
  • 結:お相手と涙
アンと母の元に親族が来ているとき、ヴァイオレットが訪ねてくる。

ヴァイオレットのことが人形に見え、嫌なものだと感じるアン。

お客さんが帰ったあと、母はヴァイオレットとともに手紙を書き始める。

その隣にいることを許されないアンはさみしく思いつつ、サンルームで書く二人を窓から見つめる。

が、母の体調が悪くなってしまう。

母の体がよくないため、ヴァイオレットのお相手をするアン。

お人形遊びをするアン。しかし、すぐ部屋の準備ができたと呼ばれヴァイオレットはその場から去っていく。

アンのモノローグで物語が始まります。いつものパターンですね。

親族が追い出されるまでのシーンでなんとなく、母とアンがどんな状況なのかも分かりやすく描写されていますね。ありがちな設定ではあるので、ライトな描写でも十分でしょう。

「飲んだ紅茶どうなるの?」というアンの問いは伏線的な機能がありますね。

その後の貸出期間というので軽いリミットを定めています。7日は子供にとって、ぎりぎり我慢できるかできないかぐらいなので、いい塩梅ですね。

「あなた、お人形だから遊ばれたことはあっても遊んだことはないのね」というセリフは人形だと思い込んでいないと出てこない着想ですね。このセリフでアンの思っていることが絶妙に表現されています。このセリフを出すために、アンがお人形遊びが好きな女の子という設定にしたのでしょうか。それくらい良いセリフです。

承:いつまでいるの?

  • 起:何を話しているのか?
  • 承:涙
  • 転:誰にいつまで?
  • 結:夜更かしはよくない

母は体調が戻り、ヴァイオレットと手紙を書く。その様子を窓から見つめるアン。

二人が何を話しているのか気になるアン。

涙を流す母のことが気になり、夜ヴァイオレットの元を尋ねる。

しかし、ヴァイオレットは守秘義務と言って、内容を明かさない。

逆に夜更かしはよくないと言われてしまう。 

母の様子が気がかりというシーンは母の涙という伏線を入れるためのシーンとして挿入されています。

そんな涙を見て、アンが夜、ヴァイオレットの部屋を訪ねるという綺麗な流れができています。

アンに「何か御用があるのでは?」とヴァイオレットが聞いた答えで曖昧な言葉しか出てこないのは、年相応な感じが出ていますね。

アンが「お父様は立派な戦死を遂げられたの」というセリフは「難しい言葉」であり、母の言葉をそのまま使っているだけで意味が分かっていないという表現ですね。それまでの会話で「難しい言葉」というのを使っているため、このセリフが生きてきますね。

アンが部屋から出ていくときの演技やヴァイオレットの言葉をそのまま返してくるところは子供っぽさが出ていますね。この雰囲気は演技がキモです。

転:私よりも大事な手紙?

  • 起:アンとの遊び
  • 承:本音
  • 転:私より大事な手紙?
  • 結:どうにもならないこと

ヴァイオレットに声をたくさんかけてくるようになったアン。

しかし、本音は母としてほしい。

そんな思いを抱えるアンは発作を起こしてもなお手紙を書き続けようとする母の元へ駆け寄る。

母に「あっちに行っていて」と言われ、「私より大事な手紙?」というアン。

「そんなことないわ」と言われるも、「嘘ばっかり」「お母さんがいなくなったら私一人」「手紙なんか書かないで私と今一緒にいてよ」と言って、母を泣かせてしまう。

アンはその場を飛び出す。ヴァイオレットが追いかけ、アンを諭す。

「お母さんを泣かせてしまった」「私が悪い子だからお母さんが病気になった」自分を責めるアン。

アンは「どうして手紙を書くの?」と問いかけると、ヴァイオレットは「人には届けたい想いがある」と答える。

この転で物語が一気に動きます。

まず、その前フリとして、アンがヴァイオレットと遊ぶ→本当は母に遊んでほしいという母への思いが描かれます。

その思いが加速し、発作が起っても書き続けようとする母の元に駆け寄り、母に自分の思いをぶつけます。

「お母さんがいなくなったら私一人よ」というセリフからは子供ながらに自分の状況を理解しているということが分かりますね。

そして、自分の思いをぶつけ後悔し、病気がどうにもならないことだと理解します。承での父親の戦死を伝えるような誰かの言葉をそのまま言っているような曖昧さはありません。

この一連の母との対立、ヴァイオレットとの対話でアンが病気がどうにもならないと理解する成長が垣間見えます。

また、ここまでの話になるためにその前でヴァイオレットの元に尋ねるアンのシーンを入れることで、話の流れを良くしていますね。

最後の「届かなくていい想いなんてない」#9でのローランドの言葉ですね。ヴァイオレットの成長が見えて良いセリフです。

結:50年分の手紙

  • 起:ヴァイオレットは人間
  • 承:母とアン
  • 転:母からの手紙
  • 結:ヴァイオレットの涙

手紙の代筆が終わり、ヴァイオレットが帰ることに。

ヴァイオレットの頬にキスしたアンは、ヴァイオレットに体温があることに気づき、お人形ではないことを知る。

ヴァイオレットが帰ったのち、母と日々を過ごすアン。

母が亡くなった数年、アンは母からの手紙を毎年受け取る。

母と代筆した手紙を持ち帰ったヴァイオレット。母親が死んだらアンが一人になってしまうことで涙しそうになったが我慢していたと吐露し、CH社で涙を流す。

最後はダイジェスト形式ではありますが、オチである「母は誰に手紙を書いているのか」の答え合わせになっています。

本当は母が生きていて、成長したアンと話したいという母の気持ちと、寂しがり屋なアンのために亡くなった後でも言葉をかけてあげられるようにという想いから手紙が書かれています。

50年分というのがキモですね。20歳になる誕生日までではなく、病気をしなかったらそこまで生きていたであろう50年という歳月の分だけ手紙を書いたことからそう読み取ることができますね。

最後のヴァイオレットの涙はヴァイオレットが自分以外の誰かに共感して涙を流すという感情が生まれています。今までのお話での積み重ねがここで効いていますね。

入れ子構造

今回のポイントは入れ子構造です。

このヴァイオレット・エヴァーガーデンでは毎回分かりやすい入れ子がかかっていることはご存知でしょうか?

ヴァイオレットと物語を紡ぐキャラの独白です。

最初と最後にキャラの独白があり、その変化によって、キャラの心情の移り変わりを表してます。

この#10でも最初にアンの「とっても悪いもののように思えたの」から最後の「悪いものでもなかったの」という独白が入っていますね。

このように最初と最後にキャラの独白を入れるだけでもオチと導入を綺麗に作ることができます。これがヴァイオレット・エヴァーガーデンの様式ですね。

また、そもそも物語とは入れ子の集合体とも考えることもできます。

このお話では「病で幾ばくもない母が娘のために何十年分の未来の娘に手紙を書く」という話です。

その中でアンがヴァイオレットのことを最初は「人形」最後に「人間」と気づくという変化があります。

加えて、アンが「飲んだ紅茶はどうなるの?」が最後には飲んだ紅茶の話で恥ずかしがるというアンの女性としての成長もあります。

他にも、最初の親戚が出てくるのと、アンが転で「お母さんのことを本当に心配している人はいないのに」という入れ子もあります。

このように物語を入れ子的に捉えると、物語がより構造的に理解する助けになります。または、前フリと捉えてもいいかもしれません。

ぜひ、活用してみてください!

終わりに

今回のポイントは「入れ子構造」でした!

この構造を意識しているだけで、物語に綺麗なオチをつけたり、変化を綺麗に表現することができます。

意識して使ってみてください。

今回の話はありがちな話ではありましたが、母は自分の最後を知ったからこそアンのために手紙を紡いだという母の視点を想像すればするほど、心が苦しくなるようなお話になっていますね。

主要キャラだけではなく他のキャラの気持ちも想像すると、さらに面白くなりそうですね。次回にも期待です!

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