#5人を結ぶ手紙を書くのか?
シリーズ構成:吉田玲子 脚本:鈴木貴昭
今回のポイントは「キャラの呼び方」です!
普段、誰かを呼ぶときって必ずしも固定的な呼び方はしないですよね。相手の立場や関係性、その時の感情などによって変わりますよね。
でも、創作でもキャラの立場や関係性って変わりますよね。しかし、「このキャラとこのキャラはこんな関係」という風に呼び方を固定していませんか?
キャラがイキイキするためにはいかにデティールを大切にするかが重要です。
ということで、今回は呼び方に注目して分析していきます。ネタバレ注意!
起承転結

- 起:恋文代筆
- 承:自筆
- 転:結婚
- 結:シャルロッテとアルベルタ
シャルロッテの代筆を担当することになったヴァイオレット。しかし、シャルロッテが手紙の返事が相手の言葉でないことをヴァイオレットに話し、ヴァイオレットは相手の自動手記人形と協議し、お互いが自筆で書くことに。シャルロッテはダミアン王子との自筆恋文を経て、結婚し、アルベルタとの別れを受け入れる
今回は王女の話のみとなっています。一応、ヴァイオレットの表情という成長がみられるものの全体的には王女のみにフォーカスされています。
また、冒頭で国の話などから、今後の方向性として戦争の話が出てくるのだと思われます。
起:恋文代筆

- アバン:ドロッセルの公開恋文
- 起:シャルロッテの元へ
- 承:年齢が近い人
- 転:書いた手紙とその返事
- 結:思い通りに行かない
次にシャルロッテの元に行くヴァイオレット。シャルロッテとの謁見で「年の近いヴァイオレットの感覚が知りたい」と言われるも、淡々と話すヴァイオレット。そんな人形みたいな様子にシャルロッテはしびれを切らして、怒ります。
その次のシーンでは、ヴァイオレットのきちんとした恋文に驚くシャルロッテ。そして、その手紙委の返事に満足していないシャルロッテはその場を退席してしまいます。
そんなシャルロッテを諭すアルベルタ。
シャルロッテとのファーストシーンではベットでの謁見でしたが、最初からちゃんとした衣装でやってしまうと子供っぽさが出ないため、ワンクッション置いていますね。
ヴァイオレットが無理やり笑顔を作るところはコミカルで面白いですね。本人は大真面目なので、ずれているのが良い。また、ここは後の成長を表すためのシーンにもなっています。
また、シャルロッテが退席するシーンではシャルロッテの内心をアルベルタが代弁することで、視聴者に分かりやすくなりかつ、尺の削減にもなっています。これは天使の3P#4でも使われたテクニックですね。
シャルロッテが王冠を外すところは、王女を辞め普通の女の子になるという心理表現(シャレード)ですが、ここは3週目ぐらいでやっと気づいたところなので、少し分かりにくかったですね。
あと、アルベルタが「どこにいてもすぐわかります」というセリフはの後の伏線として機能しています。
承:自筆

- 起:何を書いても同じ
- 承:ダミアントの過去
- 転:あなたの涙を止めて差し上げたい
- 結:短文の手紙と自筆で書く
シャルロッテはヴァイオレットに過去を語ります。結婚お見合いパーティーで泣いていたシャルロッテに飾らない言葉で声をかけてくれたダミアンとの思い出を。
そんなシャルロッテにヴァイオレットは「あなたの涙を止めて差し上げたい」と言います。
そして、ダミアンの短文恋文が届きます。ヴァイオレットはダミアンの自動手記人形と協議をし、お互いが自筆で恋文を書くことに。
何を書いても同じというセリフはシャルロッテの内心を表すいいセリフだと思います。
ここでも王冠を外す心理表現(シャレード)が行われていますね。
また、誕生日なのに自分の望まない誕生日になってしまい泣くという展開は#4のアイリスの話でも使われていましたね。特別な日なのに、嫌なことがあるというギャップにより、悲しみが分かりやすく誇張されていますね。
その後の、ありのままで話してくれたことが嬉しいというシャルロッテの気持ちは姫という立場ならではの気持ちですね。今回の代筆から自筆にする前フリにもなっています。
転;結婚

- 起:手紙を自筆で往復
- 承:手紙に書いたことを後悔
- 転:月下の庭園
- 結:恋が実った
自筆の手紙を書くシャルロッテ。その返事に自分の言葉で文字を紡いでいく。
そうして、手紙で少し強気なことを言ったことを後悔するシャルロッテ。そんなシャルロッテの元に「今宵、月下の庭園にて待つ」という恋文が届けられる。
そして、約束の場所でダミアンが登場し、プロポーズされ受け入れるシャルロッテ。
そんな様子をみたヴァイオレットは「恋が実りました」とつぶやく。
この転では最初から自筆恋文が交換されています。が、もしも、この話をもっと面白くするならここで、シャルロッテが「どんな言葉で相手に書けばいいかを悩む」というエピソードを書いた後、「自分も飾らない言葉で書く」ということに気づくエピソードを入れるといいかなと思いました。
すると、葛藤が生まれ、プロポーズの際のカタルシスが生じ、結でのシャルロッテの成長の唐突さが消えるんじゃないかなと思いました。 たぶん尺が足りなくて入れられなかったのでしょう。後、描きたかったのはシャルロッテの成長が主軸じゃなく、アルベルタとシャルロッテの関係だったからかも。
この公開恋文での民衆の反応が二人のじれったいやり取りにやきもきする感じなのがいいですね。
また、小道具としてバラが使われています。前回の#4でもアイリスの花とヴァイオレットの花が出ていましたね。
1本のバラの花言葉:「一目ぼれ」「あなたしかいない」
赤いバラ:「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美」
白いバラ:「純潔」「私はあなたにふさわしい」「深い尊敬」「純潔」「清純」
手紙ではどうしてもヴィジュアル的にインパクトに欠けるところがあるので、こういったところで表現しているのでしょう。
ヴァイオレットの「恋が実りました」というセリフもいいセリフですね。
結:シャルロッテとアルベルタ

- 起:からかうシャルロッテ
- 承:シャルロッテとアルベルタ
- 転:カトレアとヴァイオレット
- 結:ディートフリート
朝、アルベルタがいつものようにシャルロッテを起こしに行くも、ベットにおらず驚く。そこへカーテンに隠れていたシャルロッテが登場し、アルベルタをからかいます。
ウェディングドレスに身を包むシャルロッテ。シャルロッテはダミアン王子の元へ嫁ぎたいけど、アルベルタと離れるのも嫌だということを話します。
そんな彼女に「幸せにおなりなさい」と声をかけます。
一方、ヴァイオレットはカトレアとライデンに戻っているところで、カトレアに「私に借りができた。お肉食べたい」と言います。ヴァイオレットは笑顔で秋空を見上げます。
そして、ライデンについた船を下りたヴァイオレットの元に少佐の兄であるディーとフリートが来ます。
まず、起の結で「どこにいてもわかります」というアルベルタの伏線セリフと共にシャルロッテに元に向かっていました。
が、ここではベットのカーテンを開けてもシャルロッテがおらず、先に起きています。これはシャルロッテのアルベルタからの自立が描かれていますね。
「大人をからかうもんじゃありませんよ」→「もう私も立派な大人よ」というセリフもそれを象徴しています。
ウェディンドレスのシャルロッテのところでは、自筆の手紙によって自分の気持ちを素直に伝えられるようになったシャルロッテの成長が見れますね。ただ、自筆恋文のところであまり葛藤をしていなかったため、見えにくいですが。
カトレアが出てくるところでは、前のダミアン王子の自動手記人形に覚えがあると言ったヴァイオレットのセリフが伏線回収されています。
加えて、ヴァイオレットが笑顔になるところでは、前半のぎこちない笑顔が伏線回収されており、成長として描かれています。
最後のディートフリートが出てくるところはフックになっていますね。
ポイント:キャラの呼び方
今回のポイントは「キャラの呼び方」です。
誰かが誰かを呼ぶ際に「叔父さん」や「お姉ちゃん」、「太郎様」のように特別な呼び方や名前の後ろに敬称をつけたり、あだ名で呼ぶことによって、キャラ同士の関係性を表れますよね。
それだけじゃなく、今回は「同じキャラ同士での呼び方の変化」が注目ポイントです。
姫
姫様
シャルロッテ
シャルロッテ様
のように、アルベルタからシャルロッテの名を呼ぶとき、このように変化します。
特に後半の「姫」が「シャルロッテ姫」は分かりやすかったと思います。
これはアルベルタが自分の仕え、お世話する姫ではなく、一つの国の姫として認めたからこそ、この呼び方になったんだと考えられます。
絵コンテの山田さんは、
名前を呼ぶことを大切にしました。
宮廷女官のアルベルタがシャルロッテに話しかけるとき、その時々の想いに寄り添った呼びかけであるよう、少しずつ積み上げていきたいとおもい大切に大切にコンテを切りました。
姫。姫さま。シャルロッテ姫。シャルロッテ。
そのひとつひとつがアルベルタのかけがえのない愛の形としてシャルロッテに届きますよう。
そして、ヴァイオレットの愛の気づきにつながるひとつのかけらになりますよう。
想うことのかけがえのないあたたかさを教えていただけたお話しでした。
というコメントからもそういった意図で呼び方が変わっていることが分かりますね。
ちなみに第一話でもクラウディアがヴァイオレットを呼ぶとき、「ヴァイオレットちゃん」と「ヴァイオレットエヴァ―ガーデン」という2種類があったりします。
ヴァイオレットなら「ホッチンズ中佐」「社長」です。
このように、同じキャラ同士でもその時の立場、心情などから呼び方が変わります。
また、映像表現的なところまで言及すると、優しい声音だったり、呼びつける声だったりなど、その場面によって声の感じを変えるところもポイントです。
小説で生かす際にも、地の文でそのように書くことでセリフに色がつきますね。
終わりに

今回のポイントは「キャラの呼び方」でした!
キャラの呼び方一つでも関係性やその時の立場や感情で変わります。これを使いこなせるようになれば、さらにキャラがイキイキとします。ぜひ、意識して使ってみてください!
今回の話を見ていて、戦争の話が良く出てくると感じました。バックグラウンドだとしてもかなり入念に出てきています。おそらく戦争の話になり、ヴァイオレットは戦争に行くか、自動手記人形として生きるかを迫られるという話になるのかもと予想しています。
単に使いやすい題材なのかもしれませんが。
あと、今回の話で一番意外だったのが、最後です。
最後に少佐の兄であるディートフリートが出てきて、次回へのフックを作っているところです。
――作品を創る上で心がけていること、大事にしていることは何ですか?
最初と最後は美しく。読後の余韻が良いこと。読まれる方が没入出来るようにページとページに文章がまたがらないことです。
この読後の余韻というのが完全一話完結を意味しているのかと思っていたのですが、今回の#5でアニメはどうやら少し違うのかなと。
原作小説をまだ読んでいないので断定はできませんが、#4話まではヴァイオレットやそれぞれのキャラの物語が綺麗に締めくくられる形になっていました。しかし、この#5話でははっきりと次の話のフックが入っていました。
綺麗に締めた後にフックをつける今後の終わり方は独語の余韻という言葉とは少し合わないですよね。たぶん、脚本に起こした際に、変更されたのかなという印象です。
原作本が読み終わったら、どこがどう改変されているかにも注目して分析していきたいです。
コメントを残す