天使の3P#8「壁画の美少女」
シリーズ構成・脚本:雑破業
今回のポイントは「情報の開示」です。
小説を書いていて、なかなか物語が転がっていかなかったり、上手く伏線が張れなかったりする時がありますよね。
物語をいざ書くときには、大体プロットは決まっていて、キャラクターもすべてを把握している分、情報を出し過ぎてしまったりする。
そういう場合、情報開示のタイミングを見直すだけでも、かなり改善できますよ。
今回はそういった情報を開示するタイミングに注目して、分析していきます。ネタバレ注意です!
起承転結

- 起:魚と水着と怪文書
- 承:アクシデント
- 転:泥棒
- 結:嵐
怪文書が響の元に届き、アクシデントが発生していきます。転でその正体が柚葉ということが明かされ、結では嵐の中で本物の霧夢が登場するという流れになっています。
前半は、少し伝奇ホラー風になっていますが、アクシデントは照明が落ちてくるとかではなく、エロに特化したアクシデントになっています。
後半では、柚葉がその犯人と知り、物語が少しずつ解決に向かっていきます。柚葉が捕まるところはこの章でのミッドポイントですね。
起:「魚と水着と怪文書」

- 起:「魚を自慢する桜花」
- 承:「海水浴にいったこと」
- 転:「水着お披露目」
- 結:「怪文書」
ここでは最初に魚自慢の話をし、結で響の部屋に怪文書を置くための布石を置いているところです。
魚を自慢する桜花。しかし、せっかく新調した水着をお披露目できず、落ち込むという簡単ではありますが、ちゃんと起承転結の流れがあるところはいいですね。
怪文書のためのまとまりではありますが、魚を自慢するときの桜花も「桜花らしさ」が表現で来ていていい感じです。
承:「アクシデント」

- 起:「桜花の自分探し」
- 承:「練習とムカデパニック」
- 転:「音響とキョン」
- 結:「霧夢の思惑」
「自分探しをしようかなって」というイタイ発言をする桜花。それに対して、希美たちの呆れたような反応。桜花と他の人の温度差がシュールな笑いを生んでいますね。
また、自分探し発言を聞いた正義が「嵐でも来そうだな」というのは後々の伏線?になっています。
その後、練習(一応音楽要素)をした後では、上からムカデが降ってきて、驚く潤と希美というシーンが続きます。ここでは、ムカデに驚いた潤と希美は響の頭にしがみつくというラッキースケベイベントが発生しているところは注目です。
また、午後からも舞台の音響について打ち合わせをしつつ、キョンに襲われる潤と希美。ここでもお約束イベントでズボンを食べられそうになったり、なめられたりするというエッチなハプニングになっています。
このイベント自体が物語のニーズに合っているかどうかというのはこちらで書いたので割愛。
ちなみに、このキョンの名前がジョンとスミスというのは、「涼宮ハルヒ」ネタですね。こういう小ネタが出てくると、2倍楽しめていいですよね。
最後に霧夢の思惑が語られ、CMに入っていきます。ここはフックですね。
転:「泥棒」

- 起:「怪文書との関連?」
- 承:「柚葉を取り押さえる」
- 転:「警察には言わない」
- 結:「柚葉の涙」
CMが明けると、ムカデやキョンのことが怪文書と関連があるのかという響の想起からスタートします。
その後、柚葉が潤たちのピックやスティックを盗んでいるところを桜花が捕まえます。このとき、桜花が潤たちについていき、自分探しをするという伏線が回収されます。
主催者側が訴えられると、ライブができなくなるということから、警察には言わないという3人のお願いを聞き入れ、ここだけの話に留めることに、という流れになっています。
ここで今回の注目ポイント「情報の開示」になります。
響が柚葉に「なぜ?」と問いかけるも理由を言わない。動機が分からないようなシーン運びになっています。
もしもここで、柚葉が動機を吐き出してしまったら、本物の霧夢が登場する前に物語が解決に向かってしまうため、ここでは動機を言うのは、演出的に好ましくない。
また、この後の双龍島の風習や本物の霧夢の話をしなければいけなくなってしまうので、柚葉というキャラクター的にも話せないですよね。
加えて、結でのフックも作れなくなってしまうので、ここで動機を開示するのは得策ではないでしょう。
柚葉がなぜ泥棒したのかは#9話の最初に明かされ、本物の霧夢はフック、双龍島の風習は#9で霧夢のバックグラウンドを際に開示される……など、物語の開示タイミングを散らすことによって、物語をどんどん転がしていき、視聴者に対して、ワクワクを提供し続けることを可能にしています。
なので、ここでは「なぜ」に対し「ごめんなさい」という動機を言わない自然な回答になっています。
もう一歩踏み込むとしたら、理由を問いただしても理由を言わない柚葉と、どうしてそんなことをしたのかという疑問をもつ響という演出がこのシーンの最後にあれば、次のシーンの流れがさらにスムーズになったと思います。
結:「嵐」

- 起:「嵐が来る」
- 承:「機材は大丈夫か?」
- 転:「柚葉の元へ」
- 結:「霧夢登場」
嵐が来るというのは正義の「嵐でも来そうだな」の伏線?回収です。
その嵐で機材の心配をする一同。
小百合さんの元へ向かうと、柚葉がいないことを知るも、探しに行くのは危険だと止められてしまいます。が、機材の回収の許可はもらい、バンガローに向かう一同。
そこでソラの「大切なものが吹き飛ばされないように」という言葉で響は、「柚葉は壁画のところに行ったんじゃないか」ということに気が付き、バンガローを一人飛び出します。
ここで、一人飛び出すというのは、コミュ障である響の性格を考えると、この行動ですよね。コミュ力が高いキャラクターだと、みんなを説得してから向かうという行動をとるでしょう。
その状況での最適解というのはあるものですが、キャラクターの性格などを含めて行動の仕方を考えるというのも大切です。
そして、最後の霧夢が登場するシーンでは、先ほどの動機の開示を行わなかったことにより、本物の霧夢の存在がフックになっています。
終わりに

いかがでしたか? 天使の3P#8
今回のポイントは「情報の開示」でした。
情報を一気に開示してしまうのではなく、散らすことによって、物語が転がり、見てくれる人にワクワクを提供し続けることができます。
ただ、情報を開示し忘れて、よく分からない物語にならないように、情報を開示用のトレース図を作ったりするなどの工夫は必要ですね。
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では、また次回!
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